GLAY

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INTERVIEW

VOL.86 GLAY「G4・2020」インタビュー

2020.08.13

TERUインタビュー

ステイホーム期間中はどんな毎日を過ごされていましたか?

TERU
主に音楽制作をやっていましたね。これまでLogic Proの機能の1割程度しか使えてなかったのを勉強して、今では7割くらいまで使えるようになりました。今、メンバーとリモートレコーディングの形でGLAYのアルバムを作れたらいいねと話しているんです。この手法でのアルバム制作はGLAYとしては初めての試みになります。あとはライブができないのなら自分でやろうと「GLAYアプリ」でライブ配信ができるようにシステムを変えてもらって。今できる最大限のことをやっていくと、新たな活動方法が見え始めるんですよ。

配信ライブを行う際のポリシーはありますか?

TERU
自分としては、例えばインスタライブなどで音楽を無料で届けるという形に関しては一歩引いて見ていました。そのやり方を続けていたら音楽業界が破綻してしまうという怖さを感じたんです。音源にしてもライブにしても、商品としてちゃんと届けられるようなクオリティを保って、お金を発生させることを意識していますね。もちろんファンの子たちも無料で楽しめるのはうれしいでしょうけど。それよりも演奏や演出のクオリティを上げて、観た人が感動できるようなものを提供していくことがミュージシャンとしての役目なんじゃないかと思うんです。配信ライブは新たなエンタテインメントの形として始まったばかりなので手探りですが、その都度最大限のものを提示していきたいですね。

ステイホームな日々は続きますが、そんな中で「G4」シリーズの最新作「G4・2020」がリリースされます。この中でTERUさんは「ダイヤのA actII」のオープニングテーマでもある「流星のHowl」の作曲をされています。

TERU
「ダイヤのA」とのタイアップはもう5回目で、4作目までは高校野球や夏の甲子園大会をイメージした明るい曲だったんですが、今回はこれまでとは違う曲調にしようと。改めてアニメを見直してBGMを聴き込んでいたら、意外とドロドロとしたマイナー調の音が多くて。考えてみたら「ダイヤのA」は高校球児たちの苦悩の日々を描いているし、ただ明るいだけのストーリーではないんです。それで敗者をテーマに、マイナーかつEDM調の曲でその世界を表現してみようと思いました。スポーツアニメの曲というと明るくてアップテンポなイメージが強いですが、意外に評判がよくて。それとマイナー調のEDMというGLAYっぽくない作風に対してリスナーから「え、これGLAYなの? カッコいい」みたいな反応もあったし、僕としてはしめしめと(笑)。

TERUさんが手がけられたこれまでの「ダイヤのA」のテーマソングとは真逆なタイプですよね。歌詞も今回はTERUさんではなくTAKUROさんが手がけられています。TERUさんの楽曲をTAKUROさんが作詞されるのは珍しいのでは?

TERU
僕が「ダイヤのA」の歌詞を書くと必ず「青空」が出てきちゃうんですよ。「今回は空を出さないぞ」と思っても、歌詞を書いているうちに青空が出てきちゃって(笑)。ポジティブで前向きすぎる自分の性格だと、歌詞とはいえなかなかネガティブなことが書けない。それでTAKUROにお願いしたんです。

そんな事情がありましたか(笑)。ほかの曲についてもお伺いしたいのですが、HISASHIさん作詞作曲の「ROCK ACADEMIA」を聴いたときの感想はいかがでしたか?

TERU
今までのHISASHIの作風だとちょっとピリッとした、時代に釘打つような切り口の曲が多かったところ、すごくストレートで垢抜けているという印象でした。歌詞を読んで、デビュー25周年を迎えた中で、HISASHIがロックを楽しんでいるんだなと感じました。「彼女はゾンビ」以来HISASHIの中で何かが弾けたんでしょうね。「こういう曲をGLAYでやっていいんだ」というのを感じて以来、足かせが取れた感じで自由に曲作りしてる気がします。

わかります。ライブでも盛り上がりそうな1曲ですよね。

TERU
盛り上がるでしょうね! ラストはみんなで大合唱じゃないですか? でも曲が短いんですよ。GLAY史上最短くらいじゃないですか?(笑) でもその短さを感じさせない構成とアレンジになってると思います。

この曲はMVも撮影されたんですよね。

TERU
ひさしぶりに全員集まっての撮影だったので、どう臨めばいいのかわからなくて。演奏シーンに関しては、「とにかく動こう!」と思って感覚でやってましたけど、実際完成したらはしゃいでるおじさんが画面の中にいて……ひさびさにメンバーに会えたテンションが反映されていると思います(笑)。

JIROさんとTAKUROさん共作の「DOPE」はどう聴きました?

TERU
JIROは昔から変わらずメンバーだけで構築できるサウンドが好きなんだなあと。それと一貫して自分が作った曲は、コーラスをあまり入れたくないと言うんです。僕はサビでコーラスを厚くして、ちょっとキラキラした曲に仕上げることが多いので、こういった曲は歌っていて新鮮ですね。

今回のシングルには「Into the Wild」のリミックスが3トラック収録されています。これを受けて先日オフィシャルサイトでステムデータが公開されていました。

TERU
今回のシングルはリミックスも特徴なので、その訴求とみんなを楽しませる企画としてステムデータを公開したらいいんじゃないかという話になったんです。これを機にみんな音楽を作ったり、リミックスをする楽しさを味わってほしいですね。ビリー・アイリッシュみたいに新たな才能が生まれたら面白いですよね。

シングルと同時に「HOTEL GLAY」のライブ映像作品が発売されますが、ご覧になっていかがでしたか?

TERU
改めて周りの方々の協力あってのステージだったんだなと思うし、それこそライブはファンの子たちがいてこそ成り立っていたんだなと。お客さんが目の前にいてこそ発揮できるものもあるし、そこで起きるマジックを楽しみながらステージに立っていたので、またこういうライブができる日がくることを願っています。

Blu-ray、DVDにはオーディオコメンタリーも収録されるんですよね。

TERU
はい。4人でひさしぶりにクロストークができたのがめちゃくちゃ面白くて。お酒も入っていたので打ち上げみたいな感じでした(笑)。

最後にファンの方にメッセージをお願いします。

TERU
コロナの影響は人によっていろいろ違うと思うのですが、不安な日々を過ごす中でがんばろうと思える気持ちや安らげる瞬間を提供できる音楽を作ろうと思って僕らは過ごしてきました。その気持ちが今回のシングルの形になっていると思います。「G4・2020」を通して僕らが届けたいロックや今後のGLAYを感じて元気になってください。

TAKUROインタビュー

今回はリモート取材ですが、こういった形での取材には慣れましたか?

TAKURO
慣れましたね。自粛期間中は仕事も全部リモートですし、飲みもリモートでしたから。Zoom飲みは3回くらいやったんですけど、あるときにキリがないと気付いて断るようにしました。

どうしてですか?

TAKURO
飲みすぎちゃうんですよ。あと、結局盛り上がってくると人が人を呼ぶんですよね。そうすると途中で「じゃあ俺、落ちるね」って去るわけにいかなくて、結局“ひとカオス”あるまで飲み会が終わらないんですよ(笑)。

ステイホーム期間中はどんな思いで過ごされていましたか?

TAKURO
“日常”がある日突然奪われたような感じではありましたね。プライベートでは家族の長として、会社では社長として、近くにいる人たちの安全をずっと気にしてました。あとはニュースを観ながら、安全かつ日々の生活に潤いを与えられるようなエンタテインメントの新しい一手はなんだろうなあと考えて。改めて自分の生き方やGLAYのこれからを考えるいい機会になりました。

その中で気付いたことはありましたか?

TAKURO
結局俺が人生を懸けてやりたいのはライブなんだなと再確認しました。誰も観に来なくても、メンバーとスタジオに入って日々作り上げたものをライブで届けたい。10代のときにGLAYを組んで感じたことって、楽器の音が重なっていくうれしさや、他愛ないメンバー同士の会話の中で人生で大切なものを学んでいる感覚だったんです。早く今作っている曲たちを10人の前であれ、5万人の前であれ直接やりたいという気持ちになりましたね。

今回のシングルリリースは自粛期間前に決まっていたんですか?

TAKURO
はい。ただ、こういった状況になるとは想像してなかったです。一方で今それぞれ大変な状況の中にいる人に向けて新作を届けるのは意味があることだと思っています。タイトルには、例えば10年後の2030年に振り返ったときに、今のことを思い出せるようなものとして象徴的にタイトルに「2020」を付けました。

「G4」シリーズと言えばどれもコンセプトがはっきりしていますが、本作は何か決めて作られたんでしょうか?

TAKURO
デビューから25年経ったGLAYが今ミュージシャンとして充実してるんだ、と高らかに伝えたいということですね。初めてHISASHIの「ROCK ACADEMIA」を聴いたときに、彼なりの25年の活動やGLAYというバンドにおける総決算みたいな歌詞だなと感じたんです。今のシーンをリスペクトしながら、自分たちがやってきたこれまでのことを誇りを持って表現している。俺がHISASHIをGLAYに誘った身ですけど、「そういうふうに思ってくれているんだ」とリーダーとしての密かな喜びはありました。ライブでお客さんと一緒に歌ってる絵も浮かぶような曲だし、少なくとも俺にとっての救済的な存在になってます。これからのGLAYにとってアンセム的な曲になるんじゃないかな。ライブで披露できるその日まではコロナにはかかれないし、GLAYを潰せないし、事務所も潰せないし、がんばるしかないなと思っています。

TAKUROさんは今回のシングルの中では「DOPE」と「流星のHowl」の作詞に携わっていますが、TAKUROさんの作詞の根源はなんでしょうか?

TAKURO
人間に対する興味ですね。例えば、コロナ禍の中で人の心の動きや考えが可視化されますよね。それは“自粛警察”なのかもしれないし、より思いやりを持って日々暮らす人たちかもしれないし……そういった動きを見るとやっぱり人間って面白いなと思います。そこにネガティブな感情はなく、飽くなき人間への興味しかないんです。あと妻であれ子供たちであれ、GLAYのメンバーであれ、長年付き合っていても「俺の49年の経験がまったく通じない」と思う瞬間がありますし、そこがまた面白い。そういった自分の日々を歌詞にスケッチしていけたらと思っています。

もう1つTAKUROさんが携わっている曲と言えば「Into the Wild ~密~」ですが、「密」というサブタイトルの由来は?

TAKURO
ベストアルバム(「REVIEW II -BEST OF GLAY-」)に収録されている「Into the Wild」とはアレンジも違うし、当時と今のGLAYの状況も変わっているから区別をつけるためにサブタイトルを付けることにしたんですが、ただそれを表す言葉となると悩んでしまって。それでHISASHIに「今感じる気持ち、そしてこの令和2年の状況を漢字1文字で表すならなんですか?」と聞いたら、1分後くらいに「“密”です」と返ってきて(笑)。で、確かにそうだなと思ったんですね。「密」という言葉は今回のコロナ騒動でたくさんの解釈が生まれ、耳にしたときにいろんな思いを抱かせる言葉になった。いろんな解釈ができるという意味で、「Into the Wild」で伝えたいメッセージとも重なって。それと将来的に「Into the Wild ~密~」を聴いたとき、大変な時代を生き抜いたんだと確かめられるようなものにしたいなという思いもありました。

シングルには「Into the Wild ~密~」以外に、☆Taku Takahashiさん、80KIDZさん、BUNNYさんのリミックスも収録されていますがいかがでしたか?

TAKURO
スタッフ発信で実現した企画だったんですが、最先端のDJの方に解体される事でこんなに新しいサウンドになるのかと発見があったし、何よりもどのリミックスも気に入ることができましたね。切り取られる部分もそれぞれ違って、「この曲にはこういった一面もあるんだよ!」と自分自身が心から喜べるのがうれしかったです。

今回のリミックス企画でも感じましたが、GLAYは時代に合わせて新しいものを積極的に取り入れてますよね。

TAKURO
そうですね。キャリア25年以上ある日本のバンドで、ここまで新しいことを取り入れたり、変わることを許すプロダクションはないと自分たちでも思ってます。一度ヒットした曲をトレースしながら進化させていくことはあっても、今までのキャリアを売っ払うような「ROCK ACADEMIA」や「彼女はゾンビ」みたいな曲を出すアーティストはあまりいないんじゃないかな(笑)。でも、そういった新しい曲を鳴らしてやろう、売ってやろうという気持ちは常にあります。「こんな曲が世の中に流れてれいばいいのに」という曲を軽々とほかのメンバーが作るのを目の当たりにすると、16歳の頃の自分はなかなか人を見る目があったのではと思いますね。誰も褒めてくれないですけど(笑)。

最後にファンの方にメッセージをお願いします。

TAKURO
1日でも早くコンサート活動を再開したいというのが正直なところで、ファンの皆さんには「みんなが恋しいです!」と伝えたいです。

HISASHIインタビュー

ステイホーム期間中はどんな日々を過ごされていましたか?

HISASHI
自分としてはコロナ禍前とあまり変わらない感じでしたね。自宅にレコーディング環境があるので、未発表のGLAYの楽曲を完成させたり。違いはコンサートができないことかな。東京ドーム公演、名古屋ドーム公演が中止になってしまい25周年の完成形が見せられなかったのは非常に残念です。でも今はお客さんの安全が最優先ですし、その意見はメンバー全員が一致してました。これが絶望的な結果ではないというのはもちろんわかっているし、今はエンタテインメントの可能性とこれからのGLAYをどう動かしていくかを丁寧に考えながら前に進んでいる感じですね。

エンタテインメントの新しい可能性と言えば、配信ライブが増えましたよね。

HISASHI
コロナはすぐには収束しないと思いますし、配信ライブという新しいエンタテインメントの形はもっと広がっていくと思っています。僕はこれをあまり悲観的に考えず、わりとポジティブに捉えている部分はありますね。

自粛期間中、HISASHIさんは「HISASHI TV」の更新も活発にされていて、最近だと3回にわたってレコーディングの過程を公開していました。レコーディングの裏側を披露した理由は?

HISASHI
たぶん多くのファンの方はレコーディングで僕らが実際に何をしているのかは知らないと思うんです。僕が「関ジャム 完全燃SHOW」に出演して「ギターは楽しいもので、弾くのは難しくないんだよ」と伝えたように、「HISASHI TV」ではレコーディングも難しいことはなくて、遊びながら楽しみながらできることを伝えたくてやってみました。今後もレコーディングやDTMの楽しさを伝えることを目標に続けていこうかと。特にこういった状況の中で楽器やソフトウェアのスキルアップは魅力的なことだと思うんです。あとレコーディングって人間くさくて面白いんですよ。

と言うと?

HISASHI
1つのフレーズに対して長い時間悩んだり、メンバーと意見を交わしたり、試行錯誤した末に最初に録ったテイクに戻ったり……そういう人間くさいところってレコーディングやコンサートのリハーサルとかで出るんですよね。毎回120点みたいな内容じゃなくて、ダメな日はダメだし。配信を60分以内に完結しようとして、途中で言い訳をしたりすることもあるし。「HISASHI TV」ではそういう素の部分を流すのも面白いかなと。

今後「HISASHI TV」でチャレンジしたいことはなんですか?

HISASHI
ゲーム配信とかやってみたいですね。いろんなことに挑戦して幅の広さを見せていきたいです。

さて先日リリースされたニューシングル「G4・2020」についてお聞きしたいのですが、HISASHIさんの作詞作曲された「ROCK ACADEMIA」はポップなサウンドと、歌詞にGLAYの歴史を思わせる言葉が刻まれていたのが印象的でした。

HISASHI
これまでも「1988」や「黒く塗れ!」などで自分のことを歌詞に書いてきたんですが、今回は音楽に対する感謝とかバンドへの感謝、置かれている環境への思いなどを全面に打ち出しました。デビューから四半世紀にわたって活動して来られたことが、この曲を作るうえでの大きなきっかけになりました。

曲の着想は何かあったんですか?

HISASHI
「彼女はゾンビ」のような“超パーティロック”にしようと思って書き始めたんですよ。イメージとしてはアンドリューW.K.のパーティロックというか、Primal Screamの「ROCKS」みたいな。50代を目の前にしてロックをやること、余裕を持ってそれを楽しんでいることを表現しようと思ったんだけど、そこに自分の思いみたいなものもどんどん入っていって。少しだけノスタルジーが入った曲になりました。

TAKUROさんはこの曲をライブで披露できるのが楽しみとおっしゃってました。HISASHIさんはWOWOWで放送された番組のインタビューで、ライブ活動が再開されたら泣くかもと話されていましたね。

HISASHI
実際はどうなんでしょうね?(笑) いつライブが再開できるかはわからないのですが、12月の札幌ドーム公演に向けて準備を進めていきたいと思ってます。その間もいろんな形でパフォーマンスを見せたいという話はメンバー間でしてるんです。TERUはすでにアプリで配信ライブをやってますし、今までとは違う形でパフォーマンスを披露する機会もあると思います。

シングルと同時に「HOTEL GLAY」の映像作品もリリースされますが、総合演出を担当されたHISASHIさんとして改めてツアーを振り返ってどうですか?

HISASHI
「HOTEL GLAY」は25周年のアニバーサリーツアーではあったけど、メンバーそれぞれが分かれて演奏する演出など新たなチャレンジを見せられたなと思っています。周年ツアーなのにハッピーな感じではないし、緊張感があってハラハラしましたね。映像を観直して、デビュー25周年を迎えてもどんどん進化していくバンドでありたいし、その可能性を大事にしながら音楽を作っていきたいと思いました。

ライブ関連でいきますと、6月に放送されたWOWOWの番組で無観客ライブをしてみていかがでしたか?

HISASHI
ライブはお客さんの前でやることが前提だと思うので、楽しかったですが不本意な部分はどうしてもありましたね。6月25日に行われたサザンオールスターズの横浜アリーナ公演の無観客コンサートは観ていて完全にやりきった感じがありましたけど、本来ライブはお客さんと一緒に過ごすことで新たな何かが生まれるものだと思ってるんです。ライブの一番の魅力は、一瞬たりとも同じ時間が訪れることはないことですから。

確かにそうですね。最後にファンの方にメッセージをお願いします。

HISASHI
GLAYのリスナーの皆さんはこういった状況の中でも、エンタテインメントの楽しみ方を知ってる人が多いと感じています。いつ完全復活するかわからないエンタテインメント業界ですけど、GLAYがサブスクが普及し始めた頃に「GLAYアプリ」を始めたように、マイナスな局面をいかにプラスに変えられるかということを考えつつ、コロナ禍の中でも新鮮なエンタテインメントを届けたいです。それと、デビュー25周年はまだ終わってないので引き続きお楽しみに。

JIROインタビュー

ステイホーム期間中はどう過ごされていましたか?

JIRO
最初は家事的なことをやってましたね。それがある程度落ち着いてからは、映像収録をするための準備をして。「GLAY MOBILE」で簡単なベース講座みたいなのをやってるんですが、これまではスタッフ2、3人にセットしてもらって俺はただベースを弾くだけだったんですけど、移動が制限されていたので自力で撮影して、編集して……映像データをスタッフに渡す形に変えたんです。その中でいかに自分が普段どれだけプロフェッショナルな人たちと仕事ができているのか、そのありがたみをすごく感じました。自宅でレコーディングもしていて、本番に近いようなテイクのものとかも録ってるんですけど、家だとなかなか集中できなくて。何より自分が録ったテイクが、いいのか悪いのかという判断がつけづらい。ちゃんとしたスタジオで、メンバーもスタッフもそろってレコーディングできていたのは本当に恵まれていたと感じてます。

なるほど。ご自宅にいる間に新たに始めたことはありますか?

JIRO
普段聴かないようなジャンルの音楽を聴いて勉強してました。主にSpotifyのグローバルチャートのプレイリストですね。それとひたすらAMラジオ聴いてました。テレビのニュースを観るのがしんどくなってしまったときにAMラジオを聴き始めて。AMラジオの番組はトークがメインなんですが、コロナのニュース以外にも都議会の選挙の話、そのほかいろんなエピソードが話題になっていて構成が面白かったんですよね。俺もラジオ番組を持っていて、もう少しGLAYファン以外にもアプローチできるようにしたいと思っていたので参考にしています。あと、テレビの中の遠い人だと思っていた芸能人や著名人の方たちが、ラジオだとリスナーに近い距離感で話されていたのが印象的で。それは自分の番組でも大事にしていかなきゃいけないと改めて思いました。

さてニューシングル「G4・2020」には、JIROさん作曲の「DOPE」が入ってます。この曲はいつ頃から制作を?

JIRO
年明けですね。アリーナツアー中にはTERU作曲の「流星のHowl」ができていて。HISASHIが正月くらいにインフルエンザで寝込んでいたときに「ROCK ACADEMIA」を作って、「めちゃくちゃいい曲ができた!」と言ってきたんですよ。その流れからTAKUROから過去の「G4」シリーズみたいにメンバーそれぞれの曲を入れた作品にしたいから、JIROも何か持ってきてくれない?と言われて作り始めました。

イメージの指定などはありましたか?

JIRO
TAKUROからは「ビリビリクラッシュメン」みたいな曲を、と言われて。ポップなんだけどマイナー調の曲をJIROに作ってもらいたいとリクエストを受けて生まれたのがこの曲です。

ストレートなロックチューンで、JIROさんらしい曲だなと感じました。歌詞はアナーキーな雰囲気かつ社会風刺が効いてますよね。何かモチーフやテーマはあったんですか?

JIRO
Netflixのドキュメンタリー番組「DOPE」ですね。ドラッグ製造をしているコロンビアの田舎の家族が、生活をするために総出でコカインを育てている様子から、それがどんどん悪い人たちの手に渡って、最終的にはドラッグでボロボロになっていく人に迫るというドキュメンタリーなんですけど、それが面白くて。サビはその番組と関連付けて書きました。

サビには「おぞましい欺瞞 秘密のROCK'N'ROLLの宴」とパンチのあるフレーズが書かれていますね。「DOPE」とはサウンドも歌詞も対照的とも言える、HISASHIさん作詞作曲の「ROCK ACADEMIA」のレコーディングはどうでしたか?

JIRO
この曲はHISASHIが細かくプログラミングしてきてくれたので、俺のほうでアレンジする範囲は狭いんですけど、そこでいかに自分らしさを出すか意識しましたね。

その“JIROらしさ”というのはご自身としてどんなものだと認識されていますか?

JIRO
HISASHIの曲における部分になりますが、彼の作る曲はデジタルなアプローチが多いのでカチッとしているんですね。そのカチッとしてる部分に跳ねのグルーヴ感とか出すと、曲がよりよくなるんじゃないかと思ってるんです。それによって、ほかのGLAYの曲とも混じりがよくなるんじゃないかなと。HISASHIの曲では毎回、サウンドにうねりみたいなものを足していければと考えていますね。

6月にWOWOWで放送された番組はひさびさのライブパフォーマンスになりましたが、何か感じるものや発見はありましたか?

JIRO
パフォーマンス中というよりは、オンエアされた映像を観てすごく興奮したんです。収録当日は、「自分たちも元気にやってるんで、ファンのみんなももうちょっと踏ん張ってね」というエールを送る気持ちでライブをしていて。放送当日はごはんを食べてから少しお酒飲んだ後にファンの方と同じようにリアルタイムで番組を観たらめちゃくちゃよくて。GLAYのメンバーLINEでも「すごくいいね」みたいなやり取りがあって、早くみんなの前で演奏したいという気持ちが高まりました。

シングルと同日には「HOTEL GLAY」のライブ映像作品もリリースされますが、“ライブ番長”のJIROさんから観て改めてどんなツアーだったか聞かせていただけますか?

JIRO
オーディオコメンタリーの収録時のことを思い出すと「氷の翼」「Into the Wild」の流れが、あのツアーの肝だった気がしますね。決して派手な曲ではないし、今までのGLAYのようにグッドメロディを聴かせる感じではないんですが、ライブにおける「氷の翼」と「Into the Wild」の2 曲は世界観のできあがり方がハンパじゃなかったんです。映像演出を含めてしっかり曲の世界観を作れたのは、今後のGLAYの強みになるんじゃないかなと思いました。普段はあまり過去の映像を観ないんですけど、今回、オーディオコメンタリーの収録を映像を観ながらやったんですよ。

やってみてどうでしたか?

JIRO
自粛明けで初めてメンバーと会ったのがこの日だったので、映像を観ないで雑談をする感じでしたね(笑)。楽しかったですよ。

改めてお聞きしたいのですが、JIROさんにとってライブというのはどのような存在のものですか?

JIRO
やはり非日常的な空間なので、以前と変わらずファンの人たちには日頃のストレスを発散してもらえる場所になってもらえたらと思っています。自分にとっては仕事の1つではあるんですけど、気持ちとしては仕事としてやりたくないんです。ライブがある日は、その日の中でステージ上の2時間半が自分にとっても最高に楽しいものであってほしい。だから前回のアリーナツアーではあまり打ち上げに参加しなかったんですよね。打ち上げに行ったらTAKUROやHISASHIが面白い話題を持ってるのでめちゃくちゃ盛り上がると思いつつ、「ステージの上が今日一番楽しかった」と思うために。

最後にファンの方にメッセージをお願いします。

JIRO
今度ライブでみんなと会えるのはいつになるのかわからないけど、次に再会したときの感動はとんでもなく大きくて、一緒に過ごす時間の大切さを実感すると思うんです。自分たちは制限ある中でみんなに楽しんでもらえる努力をしていくつもりなので、また会えるその日を楽しみにお互いがんばりましょう。

文:中野明子(音楽ナタリー編集部)

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