GLAY

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INTERVIEW

Vol.115 JIRO インタビュー

GLAYのニューアルバム『Back To The Pops』は、“ポップ”をキーワードに自由で多彩な楽曲がひしめく多面的な作品。メンバー全員への個別インタビューを行ない、各曲2人ずつ語ってもらうことで、制作の背景に迫っていく。
JIRO作曲の「シャルロ」は、元来彼が得意とするストレートなロックンロール・ナンバーで、ライブ映えすることは間違いない。2023年にJIROが「THE GHOST」を作曲しR&Bの世界に足を踏み入れたことは、今回のアルバム全体を貫くリズム、ビート、グルーヴ感に確実に影響を与えていた。JIROが語る全6曲の詳細からは、ベーシストとして今興味があること、再発見した自身の持ち味など、心の現在地を感じ取ることができる。GLAY30周年への想いも含め、JIROはすべての質問に対し、真摯に言葉を探しながら語ってくれた。

2024.9.20

アルバムが完成した今、率直にどのような手応えを感じていらっしゃいますか?
JIRO

このアルバムは、ファンの人たちが「これこそGLAYだ」と言ってくれるような作品になっているんじゃないかな?と思います。最近のアルバムだと、TAKUROのパーソナルな訴えたいことが絡んできていたし、少し難しいところもあったと思うんですけど、今回はそういう作品ではなくて。『Back To The Pops』というタイトルを「よく付けたな」と感心しますが、本当にそう思います。今までのGLAYの良い部分を濃縮したような、進化させたようなアルバムだと思います。

30周年というタイミングにふさわしい作品、とも言えるでしょうか?
JIRO

それは意識しているんじゃないですかね? “そういうアルバムをつくる”ということで制作に取り掛かったわけではなかったですけど、たぶんTAKUROの中ではそう思ったんだろうなって。後から「タイトルを『Back To The Pops』にしたい」と言ってきたことも含めて、「そう思っていたんだろうな」と思います。

JIROさんのベースのレコーディングは、他のメンバーの皆さんよりも早い時点で終わっていたと思うんですが、完成した状態で聴くと「曲の印象が変わった」とか、発見する部分はありましたか?
JIRO

ゲストの参加に関しては、僕の録る段階では全く無かったので、後から「こういった人たちとコラボレーションする」と聞きましたし、実際に最後の曲(「Back Home With Mrs. Snowman」)でHIDE(Gre4N BOYZ)くんや南海キャンディーズの山ちゃん(山里亮太)とかの声が入ったのは、入った後で知りました(笑)。だからと言って「違うんじゃないか?」という話も全く無いですし、その時に「これを入れることが面白みに繋がる」と考えてそうしたんだろうな、としか思わないですね。

各曲についてお聞きしていきます。JIROさんには6曲分お聞きしたく、まずはM2「Buddy」についてです。デモを聴かれた時の第一印象は覚えていらっしゃいますか?
JIRO

これは元々TAKUROと亀田(誠治/プロデューサー)さんの中で、「こうしたい」というイメージが決まっていたみたいで。僕が聴いた時には既に亀田さんがつくったデモテープ音源になっていて、解釈するのはすごく早かったですね。冒頭にベースのスラップが入っているのも、この前に僕がつくった「THE GHOST」でスラップにトライした流れもあってのことだと思います。あくまでも亀田さんは提案としてのスラップが入ったデモテープをつくっていたと思うんですよ。でも僕は僕で、そういった自分にとって新しい手法にトライしていくことを今、前向きに捉えたいモードなので、面白がってプレイしました。亀田さんが提示するものをそのまま弾くというよりは、やっぱり自分なりに手を加えたものにしたかったので、若干の変化を加えて弾いています。

2023年のホールツアーでは、まさにそのスラップの部分を入念にリハーサルされていたのが印象的です。実際にライブで披露してみていかがでしたか? 
JIRO

スラップに関してはまだ初心者なので、どういう弾き方をすれば1番自分の理想の弾き方ができるんだろう?ということで、毎回リハーサルの時に永井(利光/サポートドラマー)さんに付き合ってもらって、イントロの練習をしてからリハーサルを終える、というふうにしていたんです。どのぐらい力を抜いてプレイすればいいのか?とか、どこにリズムの起点を置けばいいのか?とか、そういう部分で試行錯誤していましたね。具体的に言うと、ドラムと同時にクリックも(イヤーモニターに)返してもらっていたので、そのクリックに合わせて弾くのか、クリックを無視して永井さんに寄り添うのか、とか。あとは、ビシッと力が入っていたほうがまとまるのか、力感を逆に抜いたことによって上手く弾けるのか、など力の入れ具合についても試行錯誤しました。アリーナツアーでは、リハーサルの時はもちろん、そういうことを本番の時もずっとそれを試しながら、徐々に「あ、こういうふうにすれば自分の理想通りになるんだな」というのを見付けていきましたね。

歌詞についてはどうでしょうか? 最近のライブではTERUさんがファンの皆さんを「Buddy」と意識的に呼び始めていますよね。また、ファンの皆さんとの掛け合いで生まれる熱量は、ステージでのJIROさんにも影響を与えているのでしょうか?
JIRO

ライブで回を重ねるごとに、TERUが「皆のことを“Buddy”って呼びたい」と言うようになって、「なるほど、そうなんだ」という感じ方からまずは入りました。本人も最初はちょっと照れながら言っていた部分もあったと思うんですけど、回を増すごとに “本当の言葉”になっていくと思うんですよね。「夢見ていこうぜ!」もそうだけど、あれだけ毎回言っていたら、「本当にそういう気持ちで言っているんだな」という説得力が付くというか。だからファンの人たちにも伝わるんじゃないかな?と思うんですよね。僕もこの曲の中で、最初に演奏した時よりも、皆がそういった意識を持ちながらこの曲に向かっていく中で、そういう気持ちになっていきました。そういった意味で、皆が成長していった、ということだと思います。

ツアーの中で意味合いが進化を遂げた曲でしたよね。では、次はM3「シェア」についてです。「whodunit」と両A面シングルでしたが真逆のポップスで、GLAYの振り幅に圧倒されました。
JIRO

これも亀田さんとTAKUROで設計図をつくって、後から皆で取り組んでいった曲でした。元々TAKUROと亀田さんが「今のGLAYだったらシティポップできるんじゃない?」と話し合っていたみたいで。亀田さんから、「だったら、こういう音を入れていきましょう」とか、「こういうアレンジにしましょう」というアイディアが出て、2人で盛り上がっていたみたいです。「Buddy」もこの「シェア」も、TAKURO的にはGLAYの中で「冒険してみた」というニュアンスがあったみたいだけど、最近の僕の傾向で言うと、R&Bなど新しいものに興味があったので、めちゃくちゃ楽しんでやっていました。この後出て来る曲とかもそうですが、TAKUROは王道のGLAYのロック・サウンドもやりつつ、こういったポップスにあたる曲に至るまで、本当に振り幅が広くつくれる人なんです。そういった意味で言うと、30年経った今でも全然退屈しないですよね。

JIROさんの跳ねるベースが独自のビート感を生み、シティポップにロックバンドならではの躍動を与えている、と感じます。
JIRO

それはやっぱり、R&Bにハマッて16ビートのビート感に意識が行っていた、という部分があるので、その影響ですかね。R&Bとかモータウンとか、ロック系とはちょっと違うジャンルを得意とするベーシストの仲間が増えたので、彼らからの影響は絶対にあると思います。その中で逆に、自分の良い部分、「持ち味はこうなんだ」というのも確認できたし。あとは、そちらに全振りしなくても、そういったエッセンスを取り入れることによってGLAYの中で新しい扉が開く、とも気付いたし。そういう意味では「シェア」とか「Buddy」では、GLAYの中で上手くエッセンスを消化できているんじゃないかな?とは感じました。

「シェア」でも、永井さんのドラムとの連動感が耳に残ります。
JIRO

そうですね。亀田さんのデモの段階からあって、リズム隊のシンクロ具合はこの曲の聴きどころの一つなんじゃないかな?と思います。元々は打ち込みのドラムに対して僕が合わせてデモをつくっていたんですけど、レコーディングの時もそのシンクロ感は継続して。「そこが肝になるんじゃないかな」と思っていましたね。

ベルーナドーム公演初日と、その前夜祭ライブとなったZepp DiverCity公演で披露した時、ファンの皆さんの反応をどう感じましたか?
JIRO

歌の出だしから、「美しい音楽をGLAYでやらせたらこうだ」という見本のような感じで、始まった瞬間「待ってました!」というリアクションを既に感じていましたね。アリーナツアーで皆に聴いてもらうのが楽しみです。

M7「BRIGHTEN UP」には、JIROさんはどのようにアプローチされましたか? 
JIRO

これはHISASHIがデモテープの大枠をつくって、そこから差し替えていくようなつくり方でした。去年の7、 8月ぐらいに作業していたと思うんですけど、僕はその時ちょうど抱えている仕事が無くて。TAKUROが次から次へとロスから「ちょっとこれにベース入れてくんない?」とデモを送ってきていたので、「オッケー」なんて言いながら弾いては返していました。1、2曲だと思ったら、次から次へとどんどん送られてきて(笑)。これはその中の1曲でした。僕がベース入れた後、「じゃあHISASHIに送るわ」という感じでTAKUROがマネージャーのような役割をして自らデモを送って、上がってきたらそれをまた次のメンバーに送って、という感じでしたね。

1000本ノックのようなやり取りがあった、とTAKUROさんが語られていた時期ですね。
JIRO

そこまでではなかったですけど、朝から晩まで、食事をする以外はとにかくずっとベースを弾いている、というぐらい特にやることがなかったので、僕自身も楽しんで弾いていて。今はオンラインで本当に何でもできますけど、家でレコーディングをしようとするとやっぱり大変。今までのレコーディングの仕方だと、永井さんと同じ部屋に入って、「せ~の!」で一緒に演奏して録っていたので、自分の中ではやっぱり一発録りの美学はあるんですよ。でも、このようなデモテープをつくる時は、「まずはイントロをつくろう。次はAメロ、その次はBメロをつくろう」とやっていって、最初から聴いて「なんか流れ的に物足りないな」とか、「ちょっとベースフレーズを弾き過ぎだな」と思うとやり直して、みたいな感じで、プラモデルを組み立てるような感覚なんですよね。それを翌日にまた聴いて、「よし、これで行けるな」と思ったらTAKUROに送る、みたいな。割と時間的には余裕を持ってつくれたから、そういった意味でも楽しんでできた、というのはありましたね。

「BRIGHTEN UP」のJIROさんのベースフレーズは、様々な種類のリズムが散りばめられていて、全部乗せ、のような多彩さがありますよ。
JIRO

元々HISASHIが弾いたベースラインがあって、Aメロの折り返しのところのベースラインはそれが良かったのでそのまま採用しています。イントロは裏打ちのリズムなんですけど、表のリズムではないベースを弾くなどいろいろ試していく中で、「こういうふうにしたほうが、曲に表情が出るな」と思って変えてみたりもしました。元々のHISASHIのデモだと「彼女の“Modern…”」のような、♪ドッタンドッタンドッタンみたいな平たい感じだったので、そこにリズム的に変化を付けたいなと思ったんです。そういう面白さを知ったのは、やっぱりR&Bを弾いた影響は大きかったですね。「THE GHOST」はR&B調ではあるけれども、メロディーだけ取れば、今までの僕のパンクソングと実は変わらないんですよ。

JIROさんのベースが変化に富んでいることが、 曲の表情を豊かにする上で重要な役割を果たしているな、と。サビのフレーズもまるで歌うようですし。
JIRO

そうですかね。2番のAは1Aとは変化を付けて、ベースをメロディアスにしてみたら、その後TERUが歌にも変化を付けて僕に寄り添ってくれて。ベースで表情の変化を付けられて、そこにTERUが反応してくれたことがうれしかったですね。

メンバー間で影響を与え合いながら、曲が完成していったのですね。では次は、M8「V.」です。痛快なガレージロックナンバーで、個人的にはV系の華やかさも感じました。
JIRO

僕の中ではV系がよく分からないのでそこは何とも言えないんですけど、ミッシェル・ガン・エレファントだとか、あの辺の匂いを感じましたよね。それこそウエノ(コウジ)くんのベースが聴こえてきそうな感じがして。TAKUROは「シェア」みたいな美しい曲を作りながら、こういったシンプルな曲でもTERUの歌の音域を生かしてつくってくるのはやっぱりすごいな、と。僕がつくるシンプルなロックンロールともまた違う味があるなと思いました。(山中)さわお(the pillows)さんとかもそうだけど、本当にシンプルな曲をやっぱりつくっていて、「ツボの押さえどころがすごいな」と思います。

JIROさんのロックンロールとTAKUROさんとの違いは、どこにあると思われますか?
JIRO

僕のほうがポップな仕上がりになるというか。同じシンプルでも、僕はどちらかと言うとラモーンズだとか、そっち寄りなんじゃないかな?と思うんですよね。

この曲のJIROさんのベースのプレイは躍動感あるな、と感じました。
JIRO

それは僕もすごく思いました。この曲のデモを録っている時に、躍動感もそうですけど、ドライブ感とか粘り感とか、「それが自分らしいな」と再確認したんですよね。だから、この曲はそれ重視でいいんじゃないかな?と思って。こういったタイプの曲で難しいことを弾くのもなんだか違う気がするし、それが曲の邪魔をするというか。なので、やっていることは超シンプルですね。

グルーヴィーにするために、何か意識なさったことはあったのでしょうか?
JIRO

ちょうど今それを話そうとしていたんですけど、ダウン・ピッキングだと僕はこのニュアンスが出ないと思うんですよね。オルタネイト・ピッキングでこういったバウンドの付け方、グルーヴを付け方をしているな、と改めて実感したんです。だから、僕のピッキング・スタイルはやっぱりオルタネイト・ピッキングなんだな、とこの曲ですごく感じたかも。(※オルタネイトピッキングとはダウンピッキングとアップピッキングを交互に繰り返す操法。)

JIROさんのグルーヴはいかにして生まれるのか、原理が紐解かれた気がします。
JIRO

永井さんのドラムは8ビートでもちょっと16のニュアンスがあって、やっぱりドライブ感があるんですよ。そういう人とずっと一緒にやって来ていたから、というのもあると思うんですけど、自然とそれが気持ち良く感じる、というか。もちろんダウン・ピッキングの美学はあると思うんですけど、GLAYのこういったシンプルなロックンロールの場合は、やっぱりダウンではなくオルタネイト寄りなんじゃないかな?とは思いますね。一般のリスナーの方たちとっては、「何を言っているのか?」という話だと思うんですけど(笑)。

専門的で少し難しいかもしれませんが、大事なお話ですよね。
JIRO

でも、GLAYのビートを気持ちいいと思ってくれる人は、実はそういうことを気持ちいいと思って聴いている人たちなんだ、ということだと思うんですよね。

人間らしいというか、人間にしか生み出せないビートですよね。
JIRO

たしかに。打ち込みだと出ないニュアンスですよね。

JIROさんの息吹を感じる曲だと思いました。そして次はM10「whodunit」。JAY(ENHYPEN)さんとのコラボレーションが大きな話題となりました。JIROさんが元々ENHYPENに注目なさっていたんですよね? 
JIRO

TAKUROから、ENHYPENっていうグループのJAYというメンバーとやってみたいんだけど、と相談されて。「ENHYPENなら知ってるよ。彼らはワールドツアーの真っ最中でスケジュール的には難しいかもしれないけど、訊いてみる分にはいいんじゃない?」と返しました。僕はENHYPENのデビュー曲から知っていて、JAYのキャラクターも分かっていたので。平たく言えばアイドルだけど、JAYはその中でも芯の通ったキャラだ、というのは知っていたから、(GLAYに)溶け込むんじゃないかな?とは思っていました。それでオファーしたらOKをもらえたので、「JAYはこういうキャラで、こういう人だよ」というのを、僕の知っている範囲でTAKUROに教えた、という感じです。

JAYさんのレコーディングのため、TERUさんとTAKUROさんが渡韓なさいましたが、JIROさんから更なるJAYさん情報やアドバイスを事前にされたのですか?
JIRO

いや、全然ないです。JAYはダンスがすごいグループの一員なので、リズムに関しては敏感だろうな、と。自分の繰り出すビートに対してちゃんと「気持ちいい」と思ってもらえないとプロとして失格なので、そこに関しては意識して。この曲も全体的に裏打ちのビートなので、僕があまり今までやってこなかった手法ではあったんです。でも、それによってダンスっぽいビート感に繋がったので、最初にデモでつくった時から「難しいけど、これをやりきろう」と決めて。なので、自分としてはベースを録った時点で既に、「あとは任せた」という気持ちでした。

ダンス曲としてのカッコ良さを出すためには、ベースが肝になる、というのは最初から意識されていたんですね。
JIRO

そうですね。これも去年の夏ぐらいにデモをつくっていたんですけど、もう10年ぐらい前に楽屋でTAKUROとHISASHIが本番前のギリギリまでつくっていたデモの中にあった1曲らしいんです。それをTAKUROが「この曲を完成させたい」ということで持ってきたんですよ。「JIRO、ベース入れて」と送られてきて、最初に聴いた時に、イントロのシンセのフレーズがあって、最初はTAKUROの仮歌だったので「変な歌だな」と思っていたんですけど(笑)。スケジュールに余裕があったから、とりあえず「カッコよくしよう」ということで向き合っていきました。ベースの気持ち良さの1つに、ずっとループで展開していく、みたいなのがあるんですよ。上手くループでグルーヴをつくれて、それに上手く体が乗っかると、歌を歌っている人には敵わないかもしれないけど、たぶんどのプレイヤーよりも達成感とやりがいがあるパートなんですよね。なので、この曲にはそのループで曲を支配していく、というものがハマるんじゃないかな?と思って。元々はレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンみたいなベースラインの繰り返しも考えましたし、いろいろと試していく中で、このベースラインにバチッ!とハマッた瞬間があって。それをTAKUROに聴いてもらったらすごく喜んでくれてこうなった、という感じでした。

30周年記念シングルとしてリリースし、ベルーナドームではJAYさんをサプライズゲストに迎えて完全体で初披露。大いに盛り上がりましたし、『ミュージックステーション』にも出演されました。JAYさんとの一連のコラボレーションをどう振り返りますか?
JIRO

終わった今となっては夢みたいな感じがします。世界的なトップアイドルが、ギターを持つと一人の青年になっていたし。ステージを降りると、取るに足らないような話で普通に盛り上がったし、めちゃくちゃいい思い出でした……って、いい思い出で終わりたくないですけどね、すごく素敵な出会いだったので。

第2弾、3弾があればいいな、と?
JIRO

うん、そうですね。

TikTokでは、JIROさんまでもダンスに挑戦。コラボレーションを通じて、GLAY単独の活動では考えられないような体験もされたと思います。そこも楽しめましたか?
JIRO

もちろんファンの皆さんも喜んでくれたけど、僕たちも『ミュージックステーション』に出るのは5年ぶりとかで、JAYがいなかったら出ていなかったかもしれない。でも、JAYといることによってお祭り感覚で楽しめたんですよね。GLAYの30周年に花を添えてもらって、本当に感謝しかないですね。

30周年の記念シングルにゲストを招くのは、挑戦的とも言えると思うのですが、JIROさんはその点はどうお考えでしたか?
JIRO

メンバーには何の疑問もなかったし、JAYが来てくれたことによって、とにかく「楽しい」しかなかったです。30周年で硬派なシングルもGLAYらしかったと思うし、こういった遊びの要素があるシングルが記念シングルとなったのもGLAYっぽいなと思うんですよ。だから、どちらでも良かったと思うんです。自分たちの中では、30周年の記念シングルだからと言って「こうでなきゃいけない」という決まりは無いというか。それはやっぱりGLAYが柔軟にここまでやり続けてきたからだと思うんですよね。

『GLAY EXPO』を30周年の通年テーマに掲げ、GLAYの今の姿を“展示”していきながら、新しい出会いを求めていく。それを象徴するコラボレーションだった気がします。
JIRO

うん、そうですね。『GLAY EXPO』に関しては、「何をやったら“GLAY EXPO”なんだ?」という話になっていったんですよね。キャパが多ければ『GLAY EXPO』なのか?っていう。宮城のひとめぼれスタジアムで『GLAY EXPO 2014 TOHOKU』を開催した時は、震災からの復興に捧げるという意味があったので、自分たちとしては着地できましたけども。今またここに来て、夏には災害級の暑さになる中、リスキーになりながらたくさんの人を集めるのはナンセンスだなって。でも、『GLAY EXPO』をちゃんと昇華させていかなきゃいけなくて、自分たちにとってはものすごい難題だったと思うんですよね。そこでTAKUROが出したのが、「1年を通して『EXPO』にしようよ」という名案だったんです。ファンの人たちも「え、なんでEXPO? そうじゃないよ」という人は誰もいなかったし、すごくいい落としどころになったと思う。その中でのJAYとのコラボがあったりして、お祭り感を出すことができた、という感じはしますよね。

では最後に、JIROさん作曲の痛快なロックンロール、M13「シャルロ」。「THE GHOST」でR&Bの扉を開けたJIROさんが、その第2弾を出されるかな?と予想したのですが、ストレートなロックナンバーで驚きました。
JIRO

この曲は「THE GHOST」と同時期につくっていた曲で。歌詞を書くのはTAKUROなので、僕はいつも「俺のデモテープの中から、歌詞を書きやすいのを選んでください、お願いします」と言って曲を出すんですけど、「THE GHOST」と、「シャルロ」の原型にあたる曲のデモを渡したんですよ。「『THE GHOST』はかなり実験的なんだよね。『シャルロ』のほうは、今までの自分らしい感じなんだけど、どっちがいい?」と2曲渡したら、TAKUROが「断然『THE GHOST』!」と言って、あの時は「THE GHOST」が選ばれたんです。その後、「THE GHOST」の第2弾になる曲をつくっていて、そういった曲も実際できていたんですが、自分判断の中でまだまだ「THE GHOST」の次の曲としては甘いな、と。その時に改めて「シャルロ」の原型となるデモを聴いたら、「めちゃくちゃいいじゃん」と思って。曲だしの締め切りギリギリまで粘って、「やっぱりこれかな」と思って、TAKUROにお願いしましたね。

シンプルにカッコいい曲ですよね。ベースのフレーズ、音づくりは何をポイントにされたのですか?
JIRO

もともと僕が自宅でつくったデモテープを亀田さんに渡して。その時点ではもっとシンプルな感じだったんですよ。イントロからAメロに行く時の分かりやすい決めみたいなものが全くない状態で。そこに亀田さんがいろいろなポップな要素を付け足してくれて出来ていった曲なので。ベースに関しては、そこの決め以外は自分がデモでつくっていったままなので、初期衝動そのまま、という感じですね。

終盤の♪ウーハーというコーラスパートなど、お祭り感がありますが、あの辺りも亀田さんですか?
JIRO

そうですね。僕がデモをつくると、THE PREDATORSみたいな感じになるんですよ。そういった決めのフックも無い感じの、本当にストレートにイントロを鳴らして、だから、ラモーンズみたいな感じですよね。

函館でTERUさんの歌をレコーディングなさる時は、JIROさんも立ち合われていましたよね? 
JIRO

リモートで確認できるので、別に行かなくても良かったんですけどね。ただ、やっぱり近年、TERUのスタジオで歌を録っていて、そこでグルーヴ感が生まれている、というのは知っていたので。亀田さんやエンジニアの工藤(雅史)さんとTERU、TAKUROとの信頼度がどんどん日に日に増していっていて、それを覗きに行きたい、という感じですかね。前年にも1回行ったことはあったんですけど、その時に「なるほど、こういった環境の中でレコーディングが行われてるんだな」と思ったし、それが本当にリラックスしていて楽しそうで。都内のスタジオでのリズム録りの時も、亀田さんは雰囲気づくりが本当に上手いので、もちろんすごく楽しいんですけど。函館に行ったら飲み会とかもセットになるので(笑)。

仲間の皆さんもたくさん遊びに来られますしね(笑)。
JIRO

そういうのも含めて「楽しそうだな」と思って。なので、1泊2日ではありましたけど行ってきて、亀田さんたちとも飲みました。

作曲者として、TERUさんの歌に対するディレクションはされたのですか?
JIRO

今は無いですね。というのも、TERUが真面目になってくれて(笑)、デモテープの時から本番を想定した歌メロとかをしっかり把握して入れてきてくれるから。以前は「本番で100%を出せばいいでしょ」という臨み方だったので。それでも良かったんですけど、やっぱり自分のこだわっているメロディーラインは、本番ではちゃんと理想通りに歌ってほしいな、というのはあったんですよね。だから過去にはヴォーカルのレコーディングの時に、TERUに「ここはもう少しメロディーをこうしてほしい」と伝えるやり取りがありましたけど、今はそういうのが全くなくなったので。だから今回の「シャルロ」のレコーディングも、別に僕が行く必要はなかったんですけどね。

ライブで間違いなく盛り上がりそうな曲です。
JIRO

そうですね。結果的に、このアルバムのこの並びでR&B系の曲が来てもちょっと違ったのかな?と思うので、「シャルロ」で良かったと思います。あと、佐渡島で『GLAY DAY SPECIAL“LIVE BY THE SEA”』を撮影した時、 野外がとても似合うGLAYの新曲にふさわしいロックンロール・ナンバーだな、と思いながらこの曲を演奏していて。「これはライブで盛り上がるんじゃないかな?」と期待が膨らみましたね。

曲順をくじ引きによる抽選で決めたそうですね。JIROさんも楽しめましたか?
JIRO

うん、楽しみましたよ。TAKUROが「今はサブスクで聴く人が多い時代だし、曲順ってどうなんですかね、亀田さん?」と言い出したんですよ。「他のアーティストはこだわってるんですか?」と訊いたら、亀田さんが「アルバムを出すアーティストは、もちろんこだわってるよ」なんて答えていて。TAKUROが「今の時代の聴き方って、曲順とかあって無いようなものなんじゃないですか? なので、抽選にするのはどうでしょう?」と言い出したんです(笑)。

かなり大胆な決断ですよね。
JIRO

でも、僕も自分のラジオ番組で選曲をする時、アルバム単位ではあまり聴かなくなったんですよね。昔はアルバムが好きで、「中でもこの曲が好きだ」というところまで納得できたら曲を紹介をする、ということに対してこだわりを持っていたんですけども。最近はそうではなく、「この曲が好きだ」ということで何度も聴いているうちに、「他の曲も聴いてみよう」となって好きになる場合もあるんです。 だから、結局どちらでも一緒かな?と考えていたところだったので。もちろん考え抜いて決めた曲順もいいだろうし、それに越したことはないと思うけど、こういう考え方も今っぽいんじゃないかな?と思ってくじ引きで決めました。

くじ引きの場はさぞ賑やかだったのだろうな、と想像するだけで楽しいです。
JIRO

GLAYの柔軟性を表しているんじゃないですかね?そこで1人が「どうしても嫌だ」と言い出して、「なんで嫌なんだよ?」とか誰かが返せば喧嘩になる可能性だってあるから。GLAYの場合は、「TAKUROがそれで良かったらいいんじゃない?」という感じなんですよね。

貴信頼関係あってこそですよね。
JIRO

うん、それはそうですね。

アリーナツアーが11月から始まります。詳細が決まるのはまだ先だと思いますが、JIROさんとしてはどんなツアーにしたいですか?
JIRO

この間のベルーナドーム公演では、初期の頃の曲ばかりをたくさんやったんですけど、いろいろな人から支持してもらって。99年のあの日に幕張に観に来ていた人たちも来ていたし、当時は学生で親に止められて観に行けなかった、という地方に住んでいる人たちとか、そもそも生まれていなかったという人たちとかがいる中で、「あの伝説の幕張のライブを観られた」と喜んでくれた人たちがいて。先に曲順が発表になっていたので新鮮味は無いから、「そこはどうなのかな?」とも思ったりしたんですけど、それでも皆が喜んでくれたのは大きかったんですよね。「当時の自分はこうだった」という思い出も添えて感想を伝えてくれたりもして……GLAYの楽曲は自分たちのものではあるんだけど、30年も経てばもう皆のもの、というのを本当に強く実感したんです。なので、今回のツアーは30周年ですし、ニューアルバムの曲を披露しつつ、皆の思い出に残っている曲もやりたいし。それってやっぱりヒットソングだと思うんですよね。たくさんの人の思い出のアルバムの1ページをまた見返す曲というのは、過去に人気のあったヒットソングだと思うから。 30周年はきっちりとその辺りを網羅していきたいな、とは思っています。

取材・文/大前多恵

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