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INTERVIEW

Vol.128 JIRO インタビュー

メンバーのソロインタビュー、最後を飾るのはJIROである。ニューアルバム『旅する理由を待ちながら』に収録されている攻撃的なナンバーでは、またしても最高にロックなベースラインを轟かせている彼。しかし近年のJIROは、GLAYの音楽性において、新たな角度から切り込んでいく姿勢を見せ始めている。そして今作では、あまりに印象深いアルバムタイトル曲を作曲しているのだ。
楽曲『旅する理由を待ちながら』は、打ち込みのビートを軸としながら、繊細な心模様と情景が描かれている作品。そのかけがえのないストーリーが展開していく歌の基盤として、JIROがビートやグルーヴにいっそう自覚的になった事実は非常に大きい。彼といえばストレートなパンクロック!のイメージが強く、そうした部分も健在ではあるが、今回の曲からはこの人が内包している新たな感覚がいっそう知られていくことだろう。
読んでもらえればわかると思うが、現在のJIROには、今年ひさびさの新曲リリースとライブ稼働を行ったTHE PREDATORS(山中さわお、高橋宏貴とのスリーピースバンド)、そして昨年に初作品を出したCONTRASTZ(LITEのJunIzawaと組んだツインベースのインストバンド)というふたつの課外活動の場があり、それらがGLAYの活動にも好影響をもたらしているところがあるようだ。そんな彼に、今度のツアーとアルバム、そして今のGLAYについて語ってもらった。

2026.11.6

今日の撮影はどうでした?
JIRO

うん、今回のデザイナーの糸山(泉)さんは、信藤三雄さんの事務所にいた方なんですよ。昔は、実質上のデザインは糸山さんが全部やって、それをアートディレクターである信藤さんが確認して、OKだったものがこちらに来るという形でやっていたぐらいだったんです。糸山さんとはほんと、しばらく仕事はしていなかったですけど、あの頃からもう絶対的な信頼を置けるスタッフのひとりだったんですね。あと、宮原夢画さんというカメラマンさんも今日、20年ぶりぐらいに一緒にセッションしたんです。それで夢画さんに会ったら、向こうも「ひさしぶり!」みたいな感じで言ってくれて、懐かしいなと思いました。当時からすごくクオリティの高い作品を作ってくれていたので……今回の撮影のクレジットに宮原夢画さんの名前があった時は、うれしかったですね。やっぱり長く続けているとそういう再会もあるなと思って、楽しい気持ちで撮影できました(笑)。

いい感じだったんですね。で、こうしてGLAYはアリーナツアーに入っていくわけですけど、JIROさん的にはどんな思いで臨もうと思っていますか?
JIRO

はい、ツアーは新曲が多いというのがありまして……ちょっと待ってくださいね。資料見ます……(スマホを出して確認中)。

そうか、あなたはライブのセットリストを考える担当ですもんね。
JIRO

(スマホを見ながら)……今回のツアーのセットリストは8割方がニューアルバムの曲になると思うので、考えるのは苦労しました。アルバムの曲をやるという縛りがある中で、そこにどういう(既存の)曲を入れ込むのかということと。あと、事前にメンバーと打ち合わせをした時に、コンセプトとしてあまりエンターテインメントしていない方向性でやりたいというムードがあったんですね。だとしたら、誰もが知っているヒットソングをチョイスすることはないな。だったら何をやるんだろうな?みたいな。ただ、それでもライブには、たとえば友達に連れて来られた、あまりGLAYのことを知らない層の人たちも来るわけで、そこで「つまらなかったな」みたいな感じになられたら困るので(笑)。なのでGLAYの、コテコテなヒットソングというわけではないけどシングル曲を入れようか、とか。そういう選び方をしていますね。

そういうところで苦慮しているわけですね。
JIRO

そうですね。あと、こう、拳を振り上げて盛り上がるのではない、独特の世界観を持つマイナー調の曲がけっこうある印象があって……それを流れの中にどう入れ込むかということは、自分の中で迷った部分がありました。なので、ふだんよりは(セットリストの構成に)ちょっと苦労したかもしれないです。

そうしてメンバーたちの意向を聞きながらアルバムの曲を並べて、そこにこれまでの曲も入れて。
JIRO

はい。みんなで話してまとまった(ツアーの)テーマが、何て言うのかな……ちょっと硬派な感じだったんですよ。1本のライブのテーマとして「こういう色で」みたいな感じが。オープニングはこう、世界観的にはこう。そういうのが決まってから「わかりました、じゃあ曲を考えます」みたいな感じなんですね。そこで僕が叩き台を出して、ほかのメンバーにプレゼンして、みたいな。

そうやってセットリストを練り上げていったんですね。で、さっきTERUさんが話していたのは、ライブを2部構成にするということだったんです。その雰囲気がそれぞれちょっと違って、みたいな。
JIRO

はい。それは、結果的にそういうふうになっていきましたね。ライブを1本通して構成していて、場面転換をする時に、曲がなかなかうまくハマらなくて。それで僕がたまたま、ここ2年ぐらいミュージカルとかを観に行っていて、そこではだいたい10分間ぐらいの休憩があるんですね。舞台が始まって、前半戦は最後のほうがスリリングな展開になって終わって、1回10分間休憩して。そこでホッと休んで、場面転換してから始まる、みたいな。で、ライブでもそういうのはありかな?と思ったんです。

そうすると、いつもと違う感じになりそうですね。で、いま硬派という話があったけど、ほかのメンバーもこのツアーはストイックなイメージを表現しているという話をしてくれていまして。
JIRO

そうですね。TAKUROに、去年までのお祭り感のあるGLAYは抑えたいという意向があったので、そこまで覚悟が決まっているんだったら、あとはそれをサポートするだけ、というところです。

わかりました。あなた個人としては、このアルバム以降のGLAYはどんなふうにしていければいいな、みたいなものは何かありました? 感覚として。
JIRO

うーんと、そうですね……僕は……極端ではあるかな、と思うんですね。去年まではお祭り騒ぎやってて、幕張メッセの本編最後にはアリーナの外周をトロッコに乗るなんてことをやった以上、ここまで振り幅の違うほうに転換するのは極端だなと思うんですけど。でも、そうでもしないと変わらないだろうから。ちょっとずつ方向修正していくというより、そういう感じにするほうが、結果的にちょうど良くなるという見込みなんじゃないかなと思います。

なるほど、ここからは「一転して」となるほうがいいということですね。で、皆さんは、バンドが今までと違う、何か新しいことをやろうという雰囲気になっていると言っていたんですけど、JIROさんもそうですか?
JIRO

うーん。いや、僕はどっちでもいいという感じですね。結局僕のやることって、ちゃんと演奏することだったりするんです(笑)。まあアルバムを聴いてもらったら、今回はこういった世界観なんだということは、たぶんファンの人たちに伝わるだろうし。で、それまでのテーマだったポップなGLAYが、今回のアリーナからちょっと違う世界観になったとしても、「GLAY、変わったな」というふうに思われるわけがない、というか。

あ、そう思うんですね。
JIRO

はい、そういう感じです。だから今からはそういうふうにやりたい時期に突入していくけど、またちゃんとバランスを取っていって、元のGLAYに戻ってみたりもするだろうし。だから意見のある人がいたらそっちに行くけど、俺はどっちでもいいや、という感じですね。

なるほど。その思考は、やはりベーシストですね。
JIRO

ああ(笑)……はい。

ベーシストって、バンド全体を把握する、全体をちゃんと聴きながら演奏するパートだと思うんです。全体から極端に飛び出すようなことは、ボーカリストはやってもいいし、時にはギタリストがそうすることもある。ただ、ベーシストがそれをやると、全体が乱れてしまうんですね。バンド全体が行く方向を見定めながらパフォーマンスするのがベースなんですよ。だから、たくさんキャリアを重ねてきたJIROさんは、やっぱりメンバーそれぞれが考えていることや感覚を取り込もうとしていて、その上でセットリストを考える立場にいるんだろうと思いました。
JIRO

ああ、なるほど(笑)……思うんですけど、TERUはどうやってもああいう、根っからのポップな人間なんですよ。だから今回はこういったコンセプトを立ててスタートするでしょうけど、でも、変わっていくんだろうな、と。たとえばTERUが唄っていて、「ああ、お客さん、緊張してるな」みたいに思ったら、場の空気を盛り上げるようなことをやり出すと思うんです。それでこそバンド、という感じがしますね。とくにTAKUROとHISASHIは今やろうとしていることのイメージを明確に持っていると思いますけど、それがツアーの最初の頃の公演で「うーん、なんだか空振りしてるな」みたいに思ったら、本人たちはすごく気にするだろうし……GLAYはそういうバンドなんです。そこでファンの人たちを置いて、自分たちだけで気持ち良くやっていく性質のバンドでは、絶対ないので。ただ、そういう(新しい)方向性を示すのは、やっぱり、いいことだと思います。

そうですね。じゃないと、同じ場所に安住してしまう可能性がありますからね。
JIRO

はい、そうですね。

そしてそういうことがわかるのも、ここまで長くやってきたバンドだからですよね。先の予測をするとか、バンドを活性化する意味を理解しているとか、そういうものがそれぞれのメンバーにある気がします。
JIRO

はい。で、たぶん僕がやることとしては、後ろからメンバーの感じとか、その先にいるファンの人たちを見て、たとえば「うーん、この曲の流れはちょっと違うよね」とか「客席の空気感を固める時間がちょっと長いかな」と感じることですね。もしそうなったら「この曲をスイッチさせて、もうちょっと皆さんの知っているような曲を前倒しでやろうか」とか、そういったことを言っていくと思います。

わかりました。ではここからアルバムのことを訊いていきたいんですが、JIROさん的にはどんなふうに捉えていますか? 『旅する理由を待ちながら』というアルバムを。
JIRO

僕は、楽曲がすごく難しいなと……演奏するのに難しいな、と思っていて。それは、テクニック的な要素も難しいんですね。とくにTAKUROの曲は、パッと聴く分にはTAKUROメロディーだなと思うんですけど、使っているコード進行がすごく複雑化してきていて……それは意図的にやっていると思うんですよ。なので、今までのように、感覚で「たぶん次ここだろうな」と思ったら「あ、違った!」みたいな感じになるんです。それを今まさに家で練習している最中なんですけど、そういったコード進行のトラップがすごく多いなぁという感じがします。

ああ、これまでの感じでいくと間違えてしまう、みたいな。セオリーが違ってきていると。
JIRO

はい。そのあたりはTAKUROの中で、すごく実験しながら曲作りをやっていたんじゃないかなという感じがします。ただ、そういう話は、本人からは一切聞いていないですけどね。

そうなんですね。で、前半には、アグレッシヴな曲が多いですよね。言わば極端なわけですが、これができるのはバンドの状態がいいからではと、僕は思いました。
JIRO

はい。僕がいいなと思ったのは、やっぱりHISASHIが書いた『汚れた英雄』をTAKUROが聴いて、面白ぇな!となって、そこで「マネージャー! これ、次のシングルにするから!」みたいに盛り上がったことですね。そういう感じは、普通のバンドだとちょっとありえない気がするんですよ。このぐらいキャリアを重ねたバンドが、そういうふうに面白いなと感じたことをシングル曲にしてしまう(笑)。それがこのバンド、というか、TAKUROの面白いところだなと思います。

そうですね。そして何と言っても、あなたが書いたアルバムタイトル曲ですよ。これが素晴らしい!
JIRO

あ、ほんとですか(笑)? ありがとうございます!

はい、とてもいいです。で、この曲がどんなふうにできていったのかを聞かせてもらいたいんですよ。
JIRO

これはですね、いろんな要素があったりするんですけど、そうですね……曲作りに関しては、バラバラで録っていったんですね。まずAメロを作って、次にそれにつながるメロディーをBメロとして作って、みたいな感じでした。そういう分割した録り方をして、次にリズムを考えていって。普通のエイトビートの感じだったのをR&B調にしてみたらどうだろう?とか。テクノっぽい感じのドラムを入れたらどうだろう?とかね。

そうして試行錯誤して作ったんですね。
JIRO

うん、そうしているうちにハマりのいいリズムがあって。それからイントロのピアノはMIDIで作ったんですけど、そしたら、すごい変なピアノになったんですよ。それを村潤(村山☆潤)といううちのサポートキーボードに弾いてもらったら、「JIROさん、これ、ちょっと人間ではムリです!」って。でも「いや、この感じがいいから、やってくんない? 君ならできる、天才だから!」とおだてて、やってもらいました(笑)。あと参考になったのが、CONTRASTZの相方のIzawaくんが、自分たちの曲にパーカッションのサンプリングをけっこう取り入れてたんですね。それまではパーカッションって、なんとなくファンキーな曲のイメージしか浮かばなかったんですけど、CONTRASTZの曲をやっている時に、無機質な変拍子に機械のパーカッションの音を入れたら、すごく良くなった時があって。『旅する理由を待ちながら』のサビの部分にパーカッションをあえて入れてみたのは、それがありました。

なるほど! この曲では、CONTRASTZで得た経験がヒントになっているんですね。
JIRO

だから自分の中では、それこそCONTRASTZの活動だったり、その前から聴いていたR&Bだったり……そういう音楽を聴いていなかったら、こういうサウンドにはならなかったなと思います。

そうしてみると、この数年間のあなたの音楽的な趣向が出た曲と言えますね。
JIRO

そうですね。それで……以前リリースした『THE GHOST』は僕がR&Bを意識して作ったもので、あれはGLAYの楽曲ではなかったようなアンサンブルの曲だったので、自分はそこを伸ばしていきたいなと思っていたんです。ただ、そこから次の締め切りまでに『THE GHOST』に続くような曲が作れなくて……ストックはほかにもあったんですけど、ちょっと自信なくて。それで過去に作っていた『シャルロ』というロックンロールの曲を持っていきました。

へえー! 『THE GHOST』、『シャルロ』の流れには、そういう背景があったんですね。
JIRO

はい。だから、また『THE GHOST』みたいな曲を作りたいな、というところから始まったのが、今回の『旅する理由を待ちながら』なんですよ。

なるほど。『旅する理由を待ちながら』は、『THE GHOST』の第2弾というより、別の発展形ですよね。それがGLAYの新しい文脈として出てきた気がします。
JIRO

うん。『旅する理由を待ちながら』のほうが、メロディアスにはなっていますね。

そう、この繊細さがいいし、それにTAKUROさんの歌詞もとてもいいし。TERUさんの歌も素敵だと思います。
JIRO

でも実際にこの曲を作った時は、サビのメロディーがあまりなくて、ちょっと棒っぽい感じなんで……だからTERUの良さをあまり発揮させられないんじゃないかな?と思って、ちょっと不安に思いつつ、だったんです。でも自分が作ってこなかったタイプの曲だったから、とりあえずTAKUROにプレゼンしてみよう、みたいな感じでした。で、僕の場合は、何曲かをTAKUROに渡して、「もし気に入ったものがあったら歌詞書いてもらっていいですか」みたいなパターンが多いんですけど、その中でこの曲をTAKUROがえらく気に入ってくれたんですね。自分としては、絶対的にこれだ!というより、メンバーに喜んでもらう曲作りをする感じなんです。

そうなんですね。TAKUROさん自身はフォークからも影響を受けていることを前々から自分で言っていて、だからGLAYはロックバンドだけど、自分の内面を繊細に唄うような曲があるわけじゃないですか。で、この『旅する理由を待ちながら』は、サウンド的にはフォーク調ではないけど、メロディーだったり、歌のセンシティヴなところ、じわじわ来るところは、まさにフォークに通じるところがあって。これがアルバムの後半にあることで、救いの手を差しのべてくれる、こちらの気持ちに近づいてくれる曲になっていると思います。
JIRO

そうですか。ありがとうございます(笑)。

で、この曲はライブで披露されてきているわけですが、演奏していて、お客さんからはどんな感じを受けました?
JIRO

これは曲調が曲調だけに、みんなが手を挙げて乗るような曲じゃないんですよね。だからこっち側も「どういう感じで聴いてるんだろうな」と思っていました。まだ正式な音源で発表してない状態で披露していることもあって、みんなが聴き入ってくれているのは、こっちにも伝わるんですけど……どんなふうに聴かれているのか、わからないんですよ。だからその時は照明のスタッフに「客席をもっと暗くしてくれない?」と言っていました(笑)。

リアクションがちょっと気になったんですね(笑)。でもこうやってアルバムに入ると、お客さんの反応も変わってくると思います。ファンの皆さんが曲を聴いて、その上でのツアーでどんなふうに響くのかが楽しみですね。で、ツアーは来年の2月まで続くわけですけど、何か思うこと、楽しみにしていることとか、あります?
JIRO

そうですね……この前、THE PREDATORSをひさしぶりにやったんですけど、あのバンドはスリーピースで、見せることとコーラスをすることに気持ちが入ったんですよ。見せるっていうか、ふだん以上に自分が注目されているように感じて……。

ああ、ステージに3人しかいないから? そうか、GLAYだと、人数的にはその倍ですもんね。
JIRO

はい。そこで自分のたたずまいを意識したり、それにコーラスがあるのがプラスアルファで、大きなウェイトを占めていました(笑)。で、今度のGLAYの場合は、ほんとに曲の難易度が高くなるんですけど、そういった意味で言うと、純粋に……もう課題曲、ですよね(笑)。それに初めてやる曲、あと、やり慣れていない曲たち。それらを攻略していくのが、今はすごく楽しみで。

それが楽しみなんですね。
JIRO

楽しみです! で、THE PREDATORSと違ってコーラスを頑張らなくていいし、そんなに注目されない分、プレイに集中できるというか(笑)。そういう感じはあります。

(笑)そうですか。でもTHE PREDATORSの活動が入ったことで、GLAYの中での自分のあり方を確認し直せたところもあるんじゃないですか?
JIRO

そうですね、はい。ほんと、良かったことしかないです。THE PREDATORSをやったおかげで、スケジュール的にはめちゃくちゃタイトでしたけど。一生懸命頑張ってた成果が、こうしてちゃんと表れそうなので(笑)。

わかりました。ではアリーナツアーを楽しみにしています。そして、健康に乗り切っていただければと思います。
JIRO

はい! ありがとうございます。

取材・文/青木優

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